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身を焦がした少年

​Author: Saito Rei

 また薫から手紙が来ている。これで七度めだ。いい加減やめてくれと言いたいけれど、いざ言うとなるとやっぱりできない。それはなぜなんだろう。あいつが悲しむからとかそんな理由じゃないとは思っている。でも他に思い当たる節がない。となるとそれが理由なのかもしれない。いや、それともこれは俺の素直な気持ちじゃなくて、本当は手紙をもらえるのが嬉しいのだろうか。いやいや、そんなことは絶対にない。神に誓ってない、と思いたい。

 俺の名前は龍弥。中三。薫とは同じクラスなうえに班まで一緒。マジでついてない。薫と出会ったのは中三になった頃が初めてだったんだけど、最初は真面目でいいやつだな~ってなんとなく思っていた。でも今は違う。しつこさ百倍のうんこたれだ。おんなじ班になったまでは良かったんだけど、それからがなんか普通じゃないって言うか、みんなと違うと言うか、なんか変わってる。月の頭にあいつは俺の家のポストに自分で手書きした手紙を入れてくる。近況報告から始まって、俺をかっこいいだとか、スポーツがよくできるなんてありきたりなことをわざとらしく褒めて、最後にはやたらと可愛い絵が描かれている、そんな手紙だ。しかもこの電子機器が発達している時代に手紙とは、しかも男子が手紙とは、やっぱり変だと思う。女子なら、まあ今はもうラインとかになっちゃうのかもしれないけど、俺が小学生の頃は交換日記とか、手紙の交換とかをやっていたりしてたのを見た。今ではもう見なくなったけどね。俺たちだって大体どうでもいいおしゃべりは、家にいるときはラインでするし、連絡手段もほとんどそれで済ませる。手紙なんて使わない。まあそもそもあいつは携帯を持っていないらしいから、手紙っていうことになるんだってこの前本人から聞いた。でもなんで毎月送ってくんだよって追加で聞いたら、いいからいいからってごまかされた。ったくなんなんだよ。意味わからん。

 今回の手紙も大体いつもと同じだった。もうすぐテストだね。勉強の調子はどう? なんてことが書いてある。わかんないところがあったら教えてあげるよ、だって? 生意気なやつだな。でもそういうところはあいつらしいけど。龍弥ともっと仲良くしたいな~、か。俺はちょっとごめんだね、なんて心の中だけで言える本音だ。とは言っても学校であいつのことを無視してるわけじゃない。認めるのは悔しいけど俺よりあいつの方が断然頭がいいし、感も鋭い。噂によると定期テストはいつも学年で五位以内だとか。だから席が近いこともあって授業中にわからないことがあったら聞く。俺はあいつの後ろの席だから、ぽんぽんって俺が薫の肩をたたくんだ。あいつは素早く振り返って、手短にわかりやすく、でも嬉しそうに俺に教えてくれる。そういう面では、まあ、感謝してるって言ったらしてるのかもな。でも手紙のことに関してはやっぱり引くわ。俺の理解の域を超えてるからね。

 最後はやっぱり絵で締めくくられていた。あいつって実は天才? って思うことがたまにあったりする。スポーツはそれほど得意じゃないみたいだけど、めちゃくちゃできないってわけでもないみたいだし、四月にやった体力テストの五十メートル走なんて俺より早かった。勉強もオールマイティーにこなすし、絵も描ける。おまけにピアノも弾ける。この前全校集会の時に校歌の伴奏してたからわかるんだ。

 絵はやっぱり可愛い感じで、ちょっと独特な世界観だなって思う。でも、ほんの少しだけど、なんかあったかいような気持ちがするのは気のせいだろうか。

 俺は一通りさらっと手紙に目を通した後、入っていた封筒にしまい、机の引き出しの奥に突っ込んだ。あいつからの手紙はいつもこうしておく。捨てるのもなんか俺の良心が許さないっていうか、あいつに対してちょっと失礼かなって思ったりもするからだ。俺って意外といいやつだなって心の中で自画自賛して、勝手に満足してみるけど、結局なんか複雑な気分になっただけだった。

 この手紙もあいつの方から一方的に送ってくるだけで、俺の方から返事を出したことは一度もない。書くのが面倒だし、何を書いていいのかもわからない。そもそも手紙なんてほとんど書いた経験がないんだ。

 電気を消した。俺はそのまま眠りにつく。

 

 

 月曜日。いつものように学校に向かおうとして家の外に出ると、一人の人影が見えた。

「おはよー!」

 あいつだ。途端に少しだけ気分が沈む。

「あれ、なんか元気ない?」

 相変わらすのハイテンションさはいつも通りだ。

「いや、別に……ってなんでここにいんの?」

「えー、そんなの決まってんじゃん。龍弥と一緒に学校に行きたいからだよ!」

 今なんて言ったこいつ?

「約束したっけ?」

「してないけど、いいじゃんいいじゃん。早く行かないと遅れるよ!」

 薫は俺の手を無理やり引っ張って歩き出した。やれやれ、朝からとんだ目にあったな、と思う。

 でも。

 この時はまだあいつの怖さをわかっていなかった。

 まだ、知らなかった。

 

 

 ピンポーン、と今日も玄関のチャイムが来客を告げる。金曜日。薫が初めて一緒に学校に行こうと言い出した日から五日目の朝だ。ドアを開けた。

「おはよー!」

 また……。

 あの日から毎日毎日あいつが朝うちに来るようになった。毎日毎日だ。毎日毎日毎日毎日……。でも話しているうちになかなか面白いやつだなと思うようにもなってきた。今までは手紙を送ってくるという、はたから見ればちょっと変わった行為だけに目を向けていたのかもしれない。でもそれと同時に……なんとなく俺に対する羨望の眼差しというか、うまく言えないけどなんとも言いようのない気持ちをあいつは俺に対して持っているんじゃないかって、最近感じてしまう。それは俺の気のせいかもしれないけど、でもやっぱり何かを感じるんだ。目に見えないものだけど、何かうっすらとね。

 

 

 昨日は俺の誕生日だった。多くの奴らはラインで「おめでとー」的なメッセージで済ましていたけど、あいつは予想通り手紙で俺を祝ってくれた。しかも内容がいつもよりヒートアップしていて、君が生まれた時にみんなは幸せを感じたんだよ、とかわけわかんないようなことが書いてあった。もう参っちゃうよな。それに今回だけは手紙だけじゃなかった。なんとCDまでついてきた。手紙によるとあいつが自分で演奏したカノンとかいう曲が録音してあるらしい。カノンってなんか聞いたことあるけど、あんまよく知らない。とりあえず聞いてみることにする。……ピアノの独奏だった。普通にうまいと思った。なんか同じようなメロディーが追いかけっこみたいに演奏されてる。これを聞いているとちょっとだけ、ほんのちょっとだけかもしれないけど嬉しく感じた。今まで疎ましく思っていたりもしたけど、こういう祝い方はあまりされたことがないからか、やっぱり心があったまったように感じる。ラインで「おめでとー」って言われても、無機質な文字だし、やっぱそれなら言葉で直接言ってくれた方がいいなって思う。夜はそんなに豪華なパーティーとまではいかないにしても、母親が小さなケーキを買ってきてくれた。いちごのショートケーキだった。親父は、お母さんには内緒だぞとか言いながら、ゲームソフトをプレゼントしてくれた。この間テレビのCMで見た最新の欲しかったやつだ。この受験期である中三の時期には本当は毒なのだが、誕生日っていうのはいいもんだと改めて思う。

 

 

 でも、誕生日の次の日からあいつの行動がエスカレートしだした。手紙が毎日来るようになったんだ。それも初めのうちはすぐにおさまるだろうと安易に考えていたけど、一ヶ月経っても治らないから、さすがにこれはもう限界ってなってきた。この手紙のことを今まで両親には言ったことがなかったけど、もう、打ち明けようと思った。っていうか、この前俺が直接あいつに、もう手紙はやめてくれって言ったのに、あいつは全然やめてくれなくて、もうこの手段しかないって思ったんだ。そのことを聞いた両親は、まず手紙の膨大さに唖然とし、それから少し怯えていた。それと同時に親父はふつふつと怒りを煮えたぎらせているようだった。

 手紙が毎日送られて来るようになってから、電話もかかってくるようになった。いつも夜の八時半から九時ぐらいの間に、俺の携帯がなる。もちろんいつも薫からだ。特にこれといって喋ることもないから、少し言葉を交わしてすぐ切るんだけど、一体何のために毎日毎日そこまでするのかが全然わからなかった。何となく電話に出たくない日もあったけど、そうするとあいつは何度も何度もコール音を鳴らしてくるから、出ざるを得なかった。

 狂ってる。

 その言葉が、あいつにはぴったりだと思った。

 全てを知った親父が行動を起こしたのは、俺の誕生日から一週間とちょっとが経った頃だった。夜、いつもの日課のようになったあいつからの電話に俺はでずに父親が出た。怒鳴るような口調で、そして時々脅すようにして、毎日の手紙と電話をやめるように言い聞かせていた。親父がいつもはあまり見せないものすごい剣幕だったものだから、思わず身を引いてしまったけれど、ここまで言われれば、さすがにあいつも反省するだろうとも思った。根は悪いやつじゃないし、真面目な性格だから。

 電話を親父が切った後、俺は、どうだった? と尋ねた。あいつは……泣きながら謝っていたらしい。もうしないという誓いもたてさせたそうだ。少しかわいそうな気もしたが、仕方のないことだと自分を無理に納得させて、これで終わるだろうとホッとしたかった。でもなんか、腹の底でうごめく黒い虫のようなもやもやしたものが、俺を不安に駆らせていた。これで終わって欲しいのはもちろんだが、本当に全ては解決したんだろうかという疑問が俺の中でいつまで経っても消えなかった。

 次の日からは、今までの日常が嘘のように反転し、手紙が届くこともなければ、夜に電話が鳴り続けることもなくなった。それは良かったんだけど、教室であいつと話しづらくなった。というか全く話さなくなったと言った方が正しい。なんか近寄りがたい雰囲気というか、別に俺が悪いわけじゃないと思うんだけど、なんとなく罪悪感があって、授業中にわからないことがあってもあいつに聞くことができない。あいつもあいつで、前まではうるさいぐらいに俺に話しかけてきたのに、それも一切断ち切られた。他の奴らにはいつものように喋るのに、俺には話しかけなくなったんだ。だから一層不気味だし、何を考えているかが表情だけじゃわかんないから、余計に落ち着かない。いつも通りに話すあいつの表情もなんか少しだけ悲しそうに見える時もあるけど、それは俺の罪悪感が生み出した幻想なのか、実際にあいつが悲しんでいるのか、何もわからないでいた。早く班が変わらないかな……と思ってみたりもするけど、もうこのまま卒業まで変わらないことはわかっていた。班を変えるのは前期と後期の境目だけで、もう後期に入ってしまったのだ。つまり俺と薫は前期、後期ともに同じ班になったということになる。神様のいたずらなのか、ただの偶然なのかはわからないけど、ほんとマジで気まずいと思う。

 そしてある日のこと。学校から帰ってきて家のポストを見ると、茶色い封筒が入っていた。差出人の名前はなく、なんか嫌な予感がしたけど捨てるわけにもいかないから、とりあえず家の中に持っていく。リュックを置いてからハサミで口を切って中のものを取り出した。十枚程度の紙だ。

 それは、写真だった。

 しかも、写っているのは全部俺の顔だったんだ。

 驚愕。この言葉に尽きた。でてきた写真は全て隠し撮りされたようなものだ。ピントがあまりあっていないし、ブレているのもいくつかある。

「なんだよこれ……」

 ただ全ての写真がアップで映っていて、一体どこから撮ったのか見当もつかない。俺は自分の部屋に飛び込むと手当たり次第に机の上のものや棚の上のものをどかしてみた。だけどカメラらしきものはどこにもない。ベッドの下やクローゼットの中まで見たけど、やっぱり見つからなかった。一体どこから撮られたんだろう……。 そしてこの写真の差出人は誰なんだ……? そういうことを考え出すと急に怖くなってきた。どうすればいい。どうすれば……。俺はとりあえずカーテンを閉めて部屋の中を真っ暗にした。外からの盗撮ならこれで防ぐことができるだろう。でも、もしこの部屋のどこかに隠しカメラがあったとしたら……。もういても経ってもいられなくなり、俺は布団の中に潜り込んだ。今日はここからでまい、と胸に誓った。

 

 

 あの日から、俺はしばらく学校に行かなかった。隠し撮りされてると思うとなんとなく気分が悪くなったりして、足が外に向かないんだ。部屋には鍵をかけといたから、親が俺を無理やり学校に行かせようとすることもなかったし、ご飯はドアの前に置いといてくれてたから、腹を満たすこともできた。でも両親ともに慌てたことだと思う。つい最近まで普通に学校に通っていた息子が突然、登校拒否を起こしたのだから。担任もこの家に来て、ドアの向こうから何か喋ってた記憶があるけど、俺は何も返事を返さなかった。隠し撮りされてる、なんて言ったところで、それをしている相手が誰かがわかんないんだから解決するはずもないし、っていうか一番いい解決策は部屋から出ないことだって俺は知っている。だから誰が何を言おうと俺はしばらくの間この部屋の中に引きこもっていた。

 でも、もうそろそろ学校に行かないとやばいかな……って思い始めて、今日の今日こそは外に出ようと思った。なるべく人混みに紛れて登校すれば、なんとか相手の目から逃れられるかもしれないとも思った。朝起きてカーテンを開いた時に少し頭痛がしたが、無理やり気のせいだと思うことにする。リビングに降りていくと、久しぶりに息子の姿を見た両親があっけにとられたような顔をした。

「もう体調は大丈夫なの?」

 と、母親。

「無理しなくていいんだぞ」

 と、親父。

「もう大丈夫だから」

 俺はぶっきらぼうにそう言ってから朝食を手早く済ませ、家を出た。

 

 

 特に何事もなく、俺は帰宅した。学校に行けばみんなに心配されたし、担任からもいろんな話を聞かれたりしたけど、これと言って特別なことはなかった。薫は相変わらず話しかけてこないし、それも、もう今では日常になってしまったんだなと、なんとも言えないような不思議な感覚に陥ったのを覚えている。一つ気になったのは、あいつが昼に早退したことだ。理由はよく知らないが、まあそんなこと知る必要もないことかと心の中で思った。

 家の門の前まで来て、ポスト見るのが億劫だったけど、そこに吸い寄せられるようにしてその中を覗いた。

 ……またある。茶色い封筒が。

 もちろん差出人の名前はない。

 俺は深いため息を一つつく。ため息をつくと幸せが逃げるなんて今はどうでもいいことのように思えた。ただただ落胆した。この中にはまた俺の写真が入っているのだろうか。手で何が入っているかを確かめるように封筒を触ってみた。しかし、なんか写真とは肌触りが違う気もする。プラスチックの薄い板のような……。これも中を開けるまではわからないのだ。

 リビングで封筒を開けた。中から出てきたのは写真ではなく、一枚のDVDだった。予想通り、プラスチックの薄いケースの中に入っている。円盤にはただ『DVD』と印刷してあるだけで、他の部分は一切の無地だった。そのまま捨てようかとも思ったが、やっぱり気になって仕方がない。見たくないのに見たい。なんなんだこの気持ちは、と自分で分析を試みるがうまくいくはずもなかった。結局俺はそれを見ることにした。グロい映像には慣れているから、別になんともないのだけど、なにしろ何が写っているのかが全然わからないから、ホラー映画を見る前より恐怖を感じた。

 デッキに円盤を挿入した。エロ動画だったらラッキーだなと独りごち、思わず苦笑を漏らす。両親はまだ仕事に行っていて家にはいないから、もし変な映像であってもなんの問題もない。

 再生ボタンを押すとまず初めに砂嵐が映った。やけに大きい音量にビクついてリモコンで調整する。

 それから五分ほど見ていたが、ずっと砂嵐のままでなにも映らなかった。なんだ、と少し期待外れに思い、リモコンの停止ボタンを押そうとした瞬間に、突然砂嵐が消えた。俺は瞬時に視線をテレビの方へと戻す。

 そこに映っていたのは、俺だった。

「あ~ん。も、もっとついて~」

 この淫らな声はアダルト女優のものだ。俺がエロビデオを見ている姿がそこに映し出されている。体が凍りついてしまい、なにも考えられず俺はただただ呆然とテレビの画面を見つめる。

 やがてテレビの中の俺はベッドに横になり、ズボンとパンツを一気に下ろした。そして自分のものを掴み、刺激し始めた。片手では乳首を刺激している。なんでこんなものを冷静に見てんだ、はやく止めないと、と心の中でもう一人の俺が叫んでいるけど、テレビ画面から目が離せなかった。AV女優の声がだんだんと甲高くなっていき、それに比例するように俺の手コキのスピードも速度を上げていく。

「あ、んん!」

 その声からして、頂点に達したようだ。膨張した自分の息子の頭から白い液体が迸るのが見てとれた。俺はそこでテレビの電源を切った。もう見ていたくない。もういい。勘弁してくれ。そう思うが、それだけでどうにかなるものでもない。

 まさか自分の自慰のシーンを隠し撮りされていたとは。途端にある不安が沸き起こってきた。もしこれをネット上に流されたらどうする。クラスのみんなはもちろんのこと、世界中の人々が、俺のオナニーを見れるようになってしまう。恥ずかしさのあまり顔が自然に赤くなるのがわかる。手に汗が滲み、鼓動が早まる。しかし差出人が誰なのかもわからない。

 一体誰がこんなことを……。

 もしや……薫? 

 いや、あいつがそんなことをするようには見えない。というか、そう信じたい自分が心の中にいる。でも俺の親父にきつく注意を受けたあいつが、仕返しのためにこんな嫌がらせをしているという仮説を立てれば、当たっていないこともない気がする。とにかくこのDVDを早く処分しないと……。そう思った時だった。

 ピンポーン。

「ひぃ!」

 たかがチャイムの音に驚くなんて、自分はどうかしてるんじゃないかって思う。でも今は情緒不安定だ。気持ちが全然落ち着かない。心臓がばくばくしてるし、手汗がびっしょりだ。

 もしかして、またあいつがきたんじゃ……。

 俺は薄いカーテンの向こう側に目をやった。違う。薫じゃない。どこかの配達業者が宅配便を届けにきたようだ。玄関から外に出て、軽く挨拶を交わした。そこでまた仰天してしまう。地面には俺の家あてだと思われる宅配便の荷物が置いてあるんだけど、それが嫌に大きい。人が一人入れるのではないかというほどの大きな段ボール箱なのだ。俺はあっけにとられながらも署名を終えてそれをなんとか家の中に運び込んだ。

 リビングまで段ボール箱を押していき、ふーっと息を吐き出した。少し安心したのは、今度ばかりは差出人の名前があることだ。俺のばあちゃんとじいちゃんの名前が段ボールに貼られた紙に書いてあった。割れ物のシールも貼られている。

 カッターナイフでガムテープを切っていく。ザックザックザックザック。切り終わった。開けてみると白い紙に包まれた大きなものが顔をのぞかせた。だけど俺の目はそこではなく、紙に包まれたものに貼り付けられていたA4の紙に目が釘付けになっていた。

 一緒に死のう。

 そう書かれていた。背筋に冷たいものが走る。

「なんだこれ……」

 俺は震えていた。意味がわからない。こんないたずらをどうやったら思いつけるんだ。それにこの差出人が自分の祖父母じゃないことはもう明らかだった。俺のじいちゃんやばあちゃんはこんなことはしない。絶対にしない。これは誰かのいたずらだ。でも怖い。怖い。怖い。突然、何かに見られている気配がして、後ろを素早く振り返るが誰もいない。なんだろう、この嫌な感じは。俺はこの空気に飲まれたくなくて、無理やりにやけてみた。でもうまく笑顔が作れなくて、泣き顔のようになってしまうのが鏡を見なくてもわかる。なんとなく感覚でわかるんだ。

 その時だった。

 ガサ……ゴソ、ガサ、ガサ、ガサ……ゴソ。

 俺は一瞬にして凍りついた。段ボール箱の中のものがひとりでに動き出したのだ。

「う、うわああああああああああああああああああああ!」

 叫びながら後ろに尻餅をついた。心臓が、心臓が、い、今にもはち切れそうだ。

 動いてる、動いてる。得体も知れない物体が動いてる!

 その物体はゆっくりと縦に伸び上がった。そしてそれを包んでいた白い紙が、不気味な音を立てながら破れ始めた。

 びりびりびりびりびりびりびりびりびりびりびりびりびりびり。

「もう、何なんだよ!」

 早くここから逃げ出したいのに、体はいっこうにいうことを聞いてくれない。どうすればいい。必死になって考えるが、恐怖のあまり何も思いつかない。こんな状況の中でまともに頭が働くはずがなかった。

 すると人間で言う頭の部分の紙が完全に破れた。

 びりぃ!

 そこから覗いたものは……。

「薫……」

 俺の目の前に、他の誰でもない薫が立っていた。青白い顔をして、ちょうど休めの姿勢で、少しうつむき加減で。ゆっくりと薫が顔を上げた。憎悪に満ちた、恐ろしい形相をしている。こっちを睨みつけている。

「な、なんで……」

「一緒に死のうと思ってさ」

 機械のような冷酷な声だった。暖かみの欠片さえ感じられない、氷のような冷たい声。

「じょ、冗談だよな?」

「本気だよ」

 薫はそう言うと、後ろに組んでいた腕を前に持ってきた。両手に握られていたのは、二本の包丁。

「いい加減にしろよ!」

 思わず叫んでいた。

「もう、やめてくれ……」

 俺は、泣いていた。泣くのなんて久しぶりだ、なんて場違いなことを考えながら、涙を服の袖で拭う。

「もうすぐ終わるよ。一瞬でね」

 薫の顔を見る。それに気づいた彼はまた少しだけ俯いた。

「でも、最後に少しだけ、僕の話を聞いてほしい」

 薫は一呼吸置くと、再び口を開いた。

 

 

 龍弥は僕がこれまでどんな人生を歩んできたかは知らないよね。僕も君の昔のことはほとんど知らない。なんせ出会ったのがつい最近と言っても過言じゃないくらいの、中三の春だったんだから。君の知らないこれまでの僕の人生を、そしてどうして一緒に死ぬ決意をしたのかを、今、伝えようと思う。

 僕は小四の頃に父さんを癌で亡くした。僕の父さんはいつもニコニコしていて、優しかった。死んじゃうなんて微塵も思っていなかったのに、癌だってわかってから一ヶ月足らずで死んだ。悲しかった。本当に悲しかった。身近な人の死って不思議だよね。いつも一緒にいた人が突然姿を消して、もう会話を交わすことも、笑い合うことも一生なくなっちゃうんだから。想像してみてなんて言わない。きっとできないだろうから。それにこれは最愛の人を亡くした僕にだけわかる唯一の特権なのだと思う。いや、親しい人を亡くした人はみんなわかるのかもしれないね。とにかく悲しいんだ。辛くてどうしようもなくて、もう全てのことが嫌になっちゃう。それでも僕は今日まで生きてきた。でも色々大変だったんだよ。

 前はそうでもなかったんだけど、父さんが死んでから、僕は人と関わるのが苦手になった。なんでかよくわからない。ただなんとなく、心の中のどこか大切な部分が欠けてしまったような、そんな気がして、学校のクラスでもいつも一人でいた。ほとんど喋らなかったし、特に面白いこともなかったけど、勉強だけは頑張った。だから成績はそれなりに優秀で、小学校の時の通知書はいつもオール五に近かったかな。ピアノは小さい頃から習っていたから、それを無難に続けていって、絵はただ趣味で描いてただけ。こうして改めて思い返してみると、いろんなことをやってたなって思うけど、本当に心の底から楽しいって思えたことなんか一度もなかった。いつも一人ぼっちで、このまま大人になって、おじいさんになって死んでいくんだなって、まだ小学生のくせしてそんなことをぼんやりと考えながら日々を過ごしていた。

 でも小学六年になった時、転機が訪れた。友達ができたんだ。和希っていうんだけど、すごいやんちゃな子でさ。初めのうちはなんかやけに僕にちょっかいばっかかけてきて、一体なんなんだろうってずっと思ってた。でもそのうちそんなのが当たり前になっちゃって、僕も気がついた時には普通に、っていっても和樹の前だけだけど、喋れるようになっていた。和希はよく冗談を言って周りを笑わせるのが得意で、僕もそれでよく笑ってた。楽しかったな、あの頃は。本当に楽しかった。毎日のように遊んで、休みの日も和希の家に行ったり、近所を探検したり、いろいろなことをして遊んだ。一回だけ和希も含めてクラスの数人の男子たちと遊園地に行ったのが結構思い出に残ってるかな。あの頃は幸せだったとつくづく思うよ。でも、その時のことを思い出すと今でも辛くなる。楽しい思い出なのに辛くなるなんて変でしょ。でもそれはもう辛い過去になってしまった。

 和希は、その年の夏休みに、交通事故で死んでしまったから。

 葬式は、クラス全員で出席したんだけど、みんな泣いてた。もちろん僕も。大切な人が、また一人いなくなった。自分と関わる人はみんないなくなっちゃうんじゃないかって、一時期は変な妄想まで膨らんでた。でも今も時々そう思うことがある。僕と関わる大切な人は皆、いなくなってしまう。どんなに幸せな思い出を作ったとしても、結局それは辛い記憶としてしか残らない。大切な人が死ぬってそういうことなんだと思う。それからの僕はまたもと通り。中学に進学してからは人との関わりを断ち切って過ごしてきた。自分と仲良くしたいと思った人、あるいは僕が関係を築いていきたいと思った相手がいなくなってしまうのがどうしようもなく怖かった。全ての過去の記憶を封じ込めて、でもできるだけ明るい性格を装って生きてきた。ただ、自分の心を誰かに許すことは絶対にしなかった。そうすることで誰かが犠牲になるのはもう嫌だったから。

 それなのに……。

 中三の春、龍弥に出会ってしまった。今まで心を許したい人なんて中学に入ってからは見つからなかったのに、龍弥を見たときに無性にそれをしたいと思った。こんなにも強く決心したはずだったのに、心を許さないって胸に誓ったはずだったのに、だよ。不思議だね。でもやっぱりそれが普通なんだって今は思う。やっぱり人間は一人だと寂しい。一人でいたい時もあるかもしれないけれど、ずっと一人でいるのは辛いんだ。だからみんな仲間を求める。友達を求める。一人にならないように群れの中に溶け込んで、仲間外れにされないように周りに合わせてどこかに出かけたり、特に楽しくもないお喋りに身を投じたりする。ラインで仲間外れにされないように、一生懸命に絵文字とかを工夫して返信を返す。でも僕はそんなことをする仲間は欲しくなかった。本当に欲しかったのは、バディだ。たった一人でいいから本当の友達が欲しかった。途中で消えない、ともに人生を歩んでいける親友が欲しかった。

 そして、龍弥を選ぶことにした。

 携帯を持っていなかった僕は当然ラインもメールもできないから、なんとか気に入られたいと思って手紙を書いた。家にパソコンはあったけど、パスワードを知らなかったから自由に使うことができなかった。まあ、まずは同じ班になることが一番最初の課題だったんだけどね。うちの学校では班長に選ばれた人が班員を選んでいく仕組みだったから、僕はすかさず班長に立候補した。そして予定どおり班長になって、龍弥を班員にとり込んだ。そして、手紙を書き始めた。文章を書くのは得意な方だったから、色々書いて月の頭に龍弥の家のポストに入れた。本当は毎日のように送りたかったけど、いきなりそんなことしたら引かれるかなって思ってやめといた。それで龍弥の誕生日には僕が演奏したカノンのCDと手紙を送った。喜んでもらえるかどうか本当にドキドキしてたのは今でもよく覚えているよ。それからは、なんかもう伝えたいことが山のように溢れてきて、手紙を毎日送ることにした。学校だと龍弥は他の友達とのお喋りが中心で、僕とたくさん喋ることもできなかったから。でも授業中にわからないところを聞いてくれるのは嬉しかったな。龍弥の役に立ててるって思うだけで幸せな気持ちになれた。電話も毎日して、龍弥の声を聞いてホッとしてた。でも、それでも本当は……本当は、寂しかったんだ。やっぱり龍弥は龍弥で、他に友達もいるし、僕はただの同級生に過ぎないんだろうなって思えてしまって……。だから、なんとかもっと仲良くしたいと思って手紙もたくさん書いた。

 でも、それが間違いだった。

 結局、僕は龍弥のお父さんにきつく怒られて、手紙と電話をやめざるを得なかった。やっぱり毎日はやりすぎたかなって反省した。でもその時は嫌がらせのつもりじゃなかった。本当に龍弥と仲良くなりたくて、その気持ちをわかってもらいたくて手紙を出したり、電話をしたりしていた。悪いのは僕の方だったけど、やっぱり怒られるっていい気分にならない。悲しくなった。しばらくは悲しみに暮れていて、龍弥にも学校では話しかけないように心がけた。一旦距離を置いたほうがいいって母さんも言ってたから。

 でも。

 なんか急に、もう腹がたつとかそんなレベルじゃなくて、腹の底からモヤモヤが上に突き上げてくるような感じがして、無性に龍弥に仕返しをしたくなってしまった。自分が悪いのに、責任転嫁をしたくなってしまった。僕はこんなにも龍弥と仲良くしたいと思っているのに、どうして振り向いてくれないんだよ! って心の中では泣き叫んでいたんだと思う。そこからの僕はもうがむしゃらに突っ走っていった。止まることなんてできない。もう遅かったんだ。

 テレビでやっていたのを思い出して、相手のスマートフォンを乗っ取る方法をインターネットで調べた。自分の頭をフル回転させて、結構お金もかけてそれに成功した。もちろん相手には気づかれないようにスマートフォンの中の情報も見れるし、写真を撮ることもできる。僕はそれで龍弥の顔写真を撮った。ちょうど龍弥がスマホの画面に顔を向けているときにカシャっとね。結構うまくいったよ。龍弥が気づくこともなかったしね。それでプリントアウトしてから差出人の名前は書かずに封筒に入れて龍弥の家のポストに投函した。でもそれだけで龍弥が不登校になるなんて思ってもみなかった。それに、もうその前に龍弥のオナニーシーンを隠し撮りしてたから、送ろうかどうしようか迷った。それで結局、龍弥が学校に来ないうちはやめることにした。不登校なのに送っても龍弥の親が見るだけで、肝心の本人に行き渡らなかったら意味ないしね。オナニーの隠し撮りはスマートフォンからではなく、ノートパソコンからやった。パソコンもスマホと同じように乗っ取って映像を撮ったんだ。それでディスクに焼いて龍弥に届ける準備を整えた。

 龍弥が学校に出てきた日、僕は適当な理由をつけて学校を早退し、オナニーのDVDを龍弥の家のポストに入れた。そして最後の仕掛けをした。僕が宅配便によって送られてくるという、このびっくりな展開。今の時代、お金さえ出せばなんでもやってくれる業者ってネット上には結構あるから、そういうのに頼んで僕を君の家まで届けてもらった。そして僕は今ここにいる。君の眼の前に立っている。

 僕は君に宛てた手紙を書いていた時点から、もう君に対する罪悪感に苛まれていた。本当はこんなことしたら引かれるか、最悪嫌われるだろうなってことは予測がついていた。でもブレーキが効かなかったんだ。どうしても、自分の思いを龍弥に伝えたかった。ごめん。本当にごめんね。謝って済む問題じゃないことはわかっている。僕は君を傷つけ、そして僕も傷ついた。罪悪感に、そして君自身によって傷つけられた。だから死んでお詫びをしようと思う。でも最後まで一緒にいたい。一緒に死にたい。僕の最高のバディであることを、どうか受け入れて欲しい。

 

 

 話を終えた薫は、今にも泣き出しそうな表情だった。

「勝手だよ……」

 俺は呟いた。もう心の整理なんかつくはずもなかった。

「わかってる」

「だったらもうやめてくれよ……こんなこと……。そりゃ俺だって親父はお前をきつく叱った時はやりすぎかなって思ったさ。でも、もういいだろ……」

 薫は何も言わなかった。ただ無言で、憎悪に満ちた表情ではなく、悲しそうな笑みを見せるばかりだった。

「ごめん。そろそろ時間だ」

 薫は二つの包丁を構えながら段ボール箱から出ると、ゆっくりと龍弥の方に近づいていく。

「マジで、やめろって……」

 薫はもう何も言わない。龍弥の顔をまっすぐに見つめ、見つめられている龍弥自身も視線を逸らすことができなかった。

 しゃっ!

 一瞬、一本の包丁の刃が円を描いた。途端に腕に激痛が走り、切り傷から血があふれ出した。

「あああああ!」

 龍弥は薫をなんとか止めようと、彼の右腕を掴んだが、今度は左の包丁で腹の部分を切り裂かれた。血が滲み出し、服が赤黒く変色していく。あまりに痛さに全身から力が抜け、その場にしゃがみ込んだ。

「も、もうやめ」

 そう言いかけた時、さっきと同じ腹の部分を刺された。あまり深くは刺さらなかったが、それゆえか、ぐいっと、腹をえぐられた。

「あああうううううううううう!」

 包丁を引き抜かれ、真っ赤な血がおびただしく床に広がっていく。

「ゆ、許して……」

 薫の方を乞うような目で見ると、彼も無言で龍弥の方を見つめていた。一瞬涙を見た気がしたが、彼はそれを隠すようにして素早く俯いた。体が微かに震えているのがわかる。

「すぐに楽になるから……」

 薫は震える声でそう言うと、自分の腹をなんのためらいもなく刺した。

「ぐっ!」

 薫はその場に崩れ落ち、包丁を引き抜いてもう一度腹に刺す。もう一度。もう一度。薫の顔が苦痛に歪むのがわかる。龍弥の頭の中には今までの薫との思い出が走馬灯のように蘇っていた。こんな状況なのになんでこんなにもはっきりとあいつのことを考えられるのだろう。

 寂しさの中で生きてきた一人の少年。その彼は今、自ら自分の人生を終わらせようとしている。悲しみと罪悪感に苛まれた彼の人生。もし父や友人の死がなかったら、彼はここまで追い詰められずに済んだのだろうか。それはもう、わからない。いくら考えても答えが出ることはないだろう。

 薫が腹を刺すたびに、血飛沫があがる。何とかそれを止めようとして動こうとするが、体に力が入らない。それと同時に感じる激痛も、これが夢ではないことを証明していた。

「さよなら……」

 薫はそう言うと、赤く染まった手に包丁を力強く握り、自分の首にその刃を当てた。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 龍弥が絶叫を上げた瞬間、まるで何かが破裂したように、真っ赤なものが辺り一面に飛び散った。

 最後、龍弥の目に映ったのは、薫の目から流れ出した、一滴の光だった。

 

 

 ここはどこなんだろうと、もう死の世界をイメージしながら疑問に思っていたのに、俺が目覚めたのは病院のベッドの上だった。俺は、まだ死んでいなかった。生きていた。

 話を聞くと、ちょうど俺と薫が取っ組み合っていた頃、「血だらけの人が二人倒れている」と匿名で病院に連絡が入ったらしい。電話をしたのが誰なのかは結局わからずじまいだったそうだが、薫が誰かに金を払ってその時間に病院に電話をかけるように指示したんじゃないかって俺は考えてる。ただ、そうするとあいつの俺と死ぬっていう願いが叶わないのではないかとも思った。一緒に死にたいなら病院に連絡を入れなくてもいいはずだ。でも実際に連絡が入ったってことは、あいつは死にたくなかったということになるのだろうか。

 それでも。

 それでも。

 それでも。

 ……………………薫は、死んだ。

 救急車が到着した時はもう虫の息だったそうで、病院に運ばれる途中に息を引き取ったと親父から聞いた。出血が相当酷く、輸血も間に合わなかったという。幸いにも俺の傷はそこまで深くはなく、手術はしたが、命は助かった。

 ここまできて考えてみると、あいつはもしかして初めから自分だけ死ぬ気だったのではないか、とも思う。一応は俺に苦痛を与えたけど、最終的には俺を生かしておいて、自分の人生だけを終結させることを目的にしていた。だからあいつは俺の首を切ったりはしなかった。腹までで抑えてくれた。首を切ればかなりの致命傷なるぐらい、あいつなら知っていただろう。知っていたからこそ……だからこそ、あいつは自分の首を、切った。

 

 

 薫はあの世で、一体何を思っているのだろう。

 

                       *

 

 退院して一年が経った。それでも、あの出来事が記憶の片隅から消えてなくなることはない。何年経っても、一生俺の中から失われることはないだろう。初めて体験した人の死を、衝撃的なあいつの最期を、胸の奥深くに刻んで生きていくことが、あいつへの償いにもなるんじゃないかって今は思っている。

 俺はあいつを受け入れる。でも、もう実体がない人物をどう受け入れればいいんだって正直思う。だから、俺は毎年あいつの命日に墓参りに行く。自分の誕生日にはあの手紙を読み返したり、カノンのCDを聴いたりする。あいつからの贈り物は全部、一生とっておくつもりだ。あいつが生きていた証になるし、それが受け入れるということになるのかはわからないけれど、そうなると信じていたいから。

 

 

 薫、もう俺のこと許してくれたか。

 

 

 爽やかな風の音に混じって、うん! と聞こえた気がした。

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