from 19/04/17
今日は何の日?
Author: Saito Rei
「はい、みんな席について! 今日は転校生を紹介するわよ」
「えー、転校生だってー。俺、転校生よりも給食がいい」
「私は算数やりたいな~」
「げっ、よくそんなことが言えるな。算数なんて滅亡しちゃえばいい」
「健太くん、自分が算数できないからってそんなこと言わないでよ」
「ベベベベベ、別にできなくないし」
「できないじゃない。だってこの間、πの意味を答えなさいって先生に言われた時、おっぱいって答えたじゃん」
「そ、それは!」
「あのー、そんなことどうでもいいから早く席についたら?」
「もう、みんな! さっさと席に着く!」
「はいはい、席につきましょうね」
「もう、すぐ逃げるんだから」
「はい、そこの二人。いつまでも喋ってないの。おくちを閉じて」
「はいはい、わっかりましたー」
「じゃあ、さっそく転校生を紹介しますね。さあ入って」
「おお、かわいい!」
「美人だ!」
「自由の女神だ!」
「それは違うでしょ」
「東京から来た長谷川なつみさんです。じゃあ、なつみさん。自己紹介をお願いしていい?」
「はい、先生」
「真面目そー」
「みなさんこんにちは。長谷川なつみです。よろしくお願いします。終わり」
「えっ、そんだけ」
「みじかっ」
「なつみさん。それだけでいいの?」
「はい」
「じゃあ、みんな仲良くしてあげてくださいね。なつみさんの席はあそこ」
「ありがとうございます」
「うわっ。俺の隣じゃん!」
「健太くんいいなー」
「よろしくね」
「ここここ、こ、こちらこそっ!」
「緊張しすぎでしょ。鎮静剤うっとけば」
「はい、静かに。じゃあ授業を始めますよ。1限目は算数です」
「ねえねえ、携帯の連絡先交換しようよ」
「携帯? 持っていないわ」
「持ってないんだ。意外」
「じゃあ家の電話番号教えてよ」
「電話番号なんてないわ」
「電話が家にないの?」
「あるわよ」
「一体どういうこと?」
「うちにあるのは糸電話よ」
「い、糸電話!?」
「ええ。それがどうかした?」
「どうかしたって……それ使えるの?」
「ちゃんと使えるわよ」
「なんかすごい女だな」
「何か言った?」
「い、いえ、別に」
「携帯なんて古臭いわ。これからは糸電話の時代よ」
「はあ……」
「この娘はどこかおかしい……」
「じゃあ質問を変えるね」
「いつでも来なさい」
「なんか変なセリフ……」
「なつみちゃんの好きな食べ物は?」
「人間の丸焼きよ」
「ええ!?」
「な、なんてこと!?」
「すごい! クレイジーだ!」
「冗談よ」
「……だよね」
「本当に好きなのは……」
「好きなのは?」
「豚の丸焼き」
「け、けっきょく丸焼き……」
「あと、それゆけ豚肉マンも好きよ。私がいま即行でつくったキャラだけど」
「なんかパクってね?」
「オリジナルのつもりよ」
「よくわかんないけど、要するに豚肉が好きってことでいいのかしら」
「ええ、そうとも言う」
「肉食系女子……」
「何か言った?」
「いや、別になにも!」
「嘘ね。いま私に向かって、口くせえんだよバカ女って言ったでしょ」
「絶対言ってないから!」
「じゃあ、肉食べるとぶよぶよに太って将来テレビの取材受けることになって金ががっぽがっぽ入ってなんかムカつくぞこのブタ女って言ったでしょ」
「聞き間違いひどすぎ!」
「もうなんでもいいから、次の質問するわよ」
「承知したわ」
「じゃあ、得意なことは?」
「そうね……。予言、かしら」
「予言!?」
「なにそれ!」
「また冗談とか言うんでしょ」
「今度は本当よ」
「マジかよ……」
「じゃあ何か予言してみてよ」
「いいわよ」
「楽しみだな~」
「なんか、ノストラダムスみたいだな」
「それ、私の曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽曽おじいちゃんだから」
「曽多すぎでしょ」
「って言うかそれ嘘でしょ!」
「そうよ」
「なんやねん」
「って言うか予言はまだ?」
「もうちょっと待って」
「早くー」
「出たわ。地球は1時間後に消滅する」
「はあ!?」
「こ、このキチガイ女!」
「私は正常よ」
「でもなんで」
「宇宙人に侵略されるって出たわ」
「ますます信じられん」
「あなた携帯持ってるんでしょ? それでテレビは見れないの?」
「一応観れるけど」
「じゃあ観てみて」
「……な、なんてこと! アナウンサーの人、宇宙人が来たって言ってる!」
「えーーーーーー!」
「あと1時間ぐらいで地上に降り立つって」
「これは事件だ!」
「だから言ったでしょ。地球はもうすぐ終わるの」
「そんな。俺、まだ死にたくない」
「私も」
「私は死にたいわ」
「またもや爆弾発言!」
「うっそだぴょーん」
「ちょー白けた。っていうか、なつみちゃんの印象180度変わった」
「ちょっとふざけただけよ」
「こんな時にふざけないでよ!」
「怒るとシワが増えるわよ」
「なんか毒舌になってきたな……」
「なんとか宇宙人の襲来を止められないの?」
「なんともならないわね」
「あんたが予言したんだから何とかしなさいよ」
「私は預言者であって、守護衛じゃない」
「神よ。私たちを救いたまえ。南無阿弥陀仏」
「健太! ふざけないでって言ってるでしょう! っていうか宗派ごっちゃにしないでよ!」
「神様に祈るならアーメンだね。南無阿弥陀仏は仏様だから」
「どうでもいいけど、もう最後だから私、告白するわ」
「なにを?」
「健太くんのこと、好きよ」
「えええええええええええーーーーーーーーーー!!!」
「衝撃の告白!」
「マジかよ!」
「ほ、本当に!?」
「もちよ」
「じゃあ最後だから、胸触っていい?」
「どこまでバカなのよ、このスケベ男!」
「いいじゃんかよ、最後ぐらい!」
「じゃあ私も告白する! 私も健太が好き!」
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
「ダブル恋愛!」
「健太ずるい!」
「健太殺す!」
「健太死ね!!」
「なんか悪口言われてるよ、俺」
「仕方ないわね。二人から告白されたんだから。それより、さあ、どっちを選ぶ?」
「私でしょ! 健太!」
「ええっ、ど、どうすれば」
「私の方がこの女より胸大きいわよ」
「なんていう失礼極まりない発言!」
「あなた貧乳すぎて最初女装した男かと思ったわ」
「なんですって!」
「あのー、おとり込み中悪いんだけど、宇宙人きましたよ」
「ええええええええ!?」
「あ、あれ!」
「UFOだ!」
「こ、これは夢よ!」
「現実よ、あばずれ女」
「なにそれ」
「そんなことも知らないなんて。お母様が泣いているわよ」
「泣かないわよ、予言バカ」
「毒舌少女なつみよ」
「自分で言っちゃったよ」
「そんなことより見て! UFOが近づいてきてる!」
「みんな、お別れよ」
「死にたくない!」
「お父さん、お母さん!」
「もっと勉強がんばっとけばよかった!」
「最後におっぱい触りたかった!」
「それは禁断の発言でしょ」
「宇宙人出てきた!」
「ああ、死よ!」
「あれ、私のお父さん」
「え?」
「おお、なつみ。やっほー」
「パパ、そろそろ帰るわ」
「オーケーオーケー、マイハニー」
「ちょちょちょ、ちょっと、どういうこと?」
「こういうことよ」
「こういうことって、全然わかんないんですけど」
「これまでのことは全て嘘ってこと」
「はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「こ、この女! 今度こそ殺すわ!」
「じゃあ、殺されないうちにさっさとずらかることにしましょう」
「ちょっと待てって!」
「なに?」
「君は一体何者なの?」
「私? 私はただの生き物よ」
「そうじゃなくて! テレビで宇宙人のニュースを流させたり、UFOを出現させたり……。ぜんぶ君の仕業なんでしょ? 一体なんなの?」
「私のうちはお金持ちなの。だからテレビ局を金で買収して宇宙人のニュースを流させたり、UFOそっくりの空飛ぶ乗り物を造って飛ばしたりしたわけ」
「なんのために?」
「ただの櫃まぶし」
「なにそれ」
「言い間違えたわ。暇つぶしよ」
「結構かわいいとこあるじゃん」
「私は初めからかわいいわよ」
「出た! 自信過剰発言!」
「なんでもいいけど、そこのあばずれ女さん。私の言ったことは全部嘘だから。よってあなたへの悪口も全てチャラになるわ」
「すごい言い訳」
「別にいいじゃない」
「許し難いけど、私は精神年齢が20歳だから許してあげるわ」
「120歳ぐらいかと思ってた」
「それ以上言うと首がなくなるわよ」
「言ったことはチャラになるってさっき言ったばかりなのに」
「まあいいわ」
「本当にもう帰っちゃうのか?」
「ええ」
「寂しいなあ」
「あ、言い忘れてたけど、今回のことに総額五億円を費やしたから、みんなで割り勘して払ってちょうだい」
「それも嘘?」
「さすがに二回目は騙されないわね。よくできました」
「じゃあ、俺が好きっていうのも嘘?」
「そういうことになるわね」
「ガビーン。ショックで失神寸前」
「でもいいじゃない。あなたの恋人はちゃんといるんだから」
「ま、まあ……」
「なに? 私じゃ不満?」
「豊胸してくれたら付き合ってやるよ」
「殺すわ」
「冗談だよ」
「その口にコンクリートでも詰めてやりたい気分」
「じゃあさよなら、みなさん。私が転校生っていうのも嘘。もうみんなと一生会うことはないと思うわ」
「っていうか、そのUFOに乗って帰るの?」
「もちよ」
「しかも窓から出るんかいっ!」
「玄関まで行くの面倒だから」
「靴は?」
「そこのあばずれ女にでもくれてやるわ」
「そこから突き落としていい?」
「その前に立ち去るつもりよ」
「おい、なつみー、そろそろ行くぞー」
「ではみなさん。ごきげんよう」
「バイバーイ」
「もう一生もどってこないでねー」
「女ってこわいな」
「あーあ。行っちゃったね」
「でもなんだったんだろうね、あの子」
「謎の毒舌美少女だよ」
「褒めてんの? けなしてんの?」
「まあ、でも面白かったじゃん」
「そだね」
「なつみ、今年の評価は70点だ」
「去年よりも10点上がったわ。嬉しい」
「また、来年も楽しい嘘をいろんな人々についておくれよ。それが私たちの仕事なんだから」
「わかってるわよ」
「なあ、いま気づいたんだけど」
「なに?」
「今日って、エイプリルフールじゃん」